そこで、改めてScratchの設計思想について調べてみた。Mediumというメディアがあるのだが、人間が書いた「いい記事」を読みたい人、人間味のある「いい記事」を書きたい人のメディアで、いわゆるLong Readsをじっくり読める場所だ。そこで探したところ、Scratchのチームがまとめて記事を書いている場所があり、そこで「
A Parents’ and Guardians’ Guide to Scratch」という記事を見つけた。そして、そこに出てきたのが、設計思想の根底にある4つのPだった。下記で参照されている「GIVE P’S A CHANCE: PROJECTS, PEERS, PASSION, PLAY」に詳しく説明されているので、まずはこれから紹介したい。
Scratch is based on a philosophy called the 4 P’s of Creative Learning 4つのPとは、Projects、Peers、Passion、Playのことで、図3に示すcreative learning spiralの重要な構成要素だという。それは、まず、作りたいものを思い浮かべ(imagine)、それに基づいてProjectを作成する(create)、作ったもので遊び(play)、他の人に見せる(share)、そして総合的に振り返って(reflect)、また次に作りたいものを思い浮かべる(imagine)というスパイラルのことだそうだ。このスパイラルに、自分がcreateした場合だけではなく、他の人のProjectをshareされた場合も含め、繰り返し繰り返し関わってさまざまな経験を積むことで、次第にユニークな考え方ができるようになり、creative thinkerになっていく、と考えられている。
Projectsは、プログラミングを学ぶ時の一般的なやり方ではないというが、Scratchでも、学びながら作ることに変わりはないものの、最初からProjectを作る、つまり、creative learning spiralを回す、ということが、しっかり意識されているのだ。
Peersは、この一連の学習プロセスの中で中心的な役割を果たすものと最初から考えられている。creative learning spiralが、一人で学習するものではなく、一緒に学ぶコミュニティの存在を大前提にしているのだが、このコミュニティメンバーがPeersである。Peersは、audienceとinspirationの2つの役割を持っており、audienceとはProjectをshareしたときにフィードバックを返してくれる存在、inspirationは他の人がshareした作品を見て新たなアイデアを思いつかせてくれる存在だ。これを容易にする仕掛けが、ソフトウェアのライセンスで、Scratchで作成したProjectは、全てCreative Commons licenseになる。そのため、元の作者を明記すれば、自由にPeersのProjectに付け足しをしたProjectを公開できるのだ。これはremixと呼ばれ、creative learning spiralを機能させるのに大きな役割を果たしている。
Passionは、Scratchのコミュニティで共有されるProjectが多様性を見せるために重要な要素となる。例えば、写真や映像などのメディアは、プログラミングの学習の妨げになるのではないか、という声が多く上がったそうだが、子どもたちは写真や映像を使うのが大好きだ(Passion)。それならば、それをもっと使えるようにしてあげよう、そういう考え方が、Passionを支えている。
Playは、その単語から一般的に考える「楽しいこと」を意味しているのはなく、取り組む姿勢を意味している。新しいこと(つまりできないかもしれないこと)にチャレンジする姿勢や、限界を試してみることだ。これは、creativeなプロセスで中心的な役割を果たすので、積極的に取り組めるよう、backpackやdraftの機能が用意されている。backpackは、Projectで使用した画像や映像を、別のProjectで使えるようにするもので、draftは、やり方が分からない未完成のProjectを公開して、Peersからアドバイスをもらえるようにするものだ。
元の記事に戻ると、代表的なProjectの事例として、「
Dance, Fleischer Cat, Dance!」が紹介されているので、動かしてremixしてみることをおすすめする。
また、保護者がどのようにScratchで学習する子どもをサポートしたら良いかについては、「家族が一緒にScratchをやる一番いい方法は、一緒に座って、いろいろやってみることです」とある。4Pを念頭に、creative learning spiralを回せるように、サポートしてあげること。これってつまり、家族もPeersとして参加する、応援するってことなので、ここまできて、ようやくASPへの関わり合い方が見えてきた。